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症例:64歳の女性,ADLは自立.
主訴:左下腹部痛.
【現病歴】来院1週間前より下腹部の違和感が時々あり.残尿感と排尿時痛を感じることもあったが,仕事と法事で忙しく,様子をみていた.来院当日の夕方,左下腹部にしぼられるような痛みが約10分間あり,いったん治まるがその後30分おきに繰り返した.胃薬を服用したが改善せず,嘔吐と悪寒(chill)も生じたため,夜間に救急外来を受診した.肉眼的血尿なし.下痢と便秘なし.
【既往歴】右尿管結石と十二指腸潰瘍の既往あり.手術歴/アレルギー/内服薬なし.
【生活歴】喫煙/飲酒なし.
【身体所見】身長155cm,体重56kg.バイタルサイン;血圧180/94mmHg,脈拍60/分,呼吸数18/分,体温37.1℃,SpO2 99%(室内気).全身状態;痛みは治まっており良好.頭頸部;貧血/黄疸なし.胸部;喘鳴(wheeze)・湿性ラ音(crackle)なし.心音;整,心雑音なし.腹部;腸雑音正常,平坦軟,左下腹部に軽度の圧痛あり,反跳痛なし,筋性防御なし.背部;CVA(肋骨脊椎角)叩打痛なし.直腸診;圧痛なし,便潜血陰性.
【検査所見】血液検査;WBC 12,300/μl,Hb 13g/dl,Hct 38%,Plt 24×104/μl,Na 140mEq/l,K 3.4mEq/l,Cl 100mEq/l,BUN 22mg/dl,Cr 0.6mg/dl,Glu 164mg/dl,CRP 0.7mg/dl.
腹部X線(KUB);右腎結石を認める.腹部エコー;両側水腎症なし.
尿検査;比重1.010,pH7.5,糖±,蛋白±,潜血1+,赤血球20~29/HPF,白血球30~49/HPF,細菌1+.尿グラム染色;多核白血球(PMN)1+,矢印の菌2+(図1).
【来院後経過】初療医は左尿管結石と尿路感染症の合併を疑ったが,37.1℃と微熱で,左CVA叩打痛と水腎症を認めないことから,腎盂腎炎に至っていないと考えた.鎮痛薬と輸液で経過観察したが,来院5時間後,悪寒とともに38.6℃の発熱が生じた.身体所見を取り直すと左CVA叩打痛が中度陽性で,腹部エコーでも軽度の左水腎症を確認した(図2).
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