レビューでわかる! いまどき診療エビデンス[20]
毒物中毒の胃洗浄適応
上條 吉人
1
1北里大学医学部救命救急医学
pp.802-804
発行日 2007年9月15日
Published Date 2007/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101256
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Q どうして胃洗浄はほとんど施行されなくなったのですか?
A 胃洗浄が予後を改善するというエビデンスがないうえに,胃洗浄によって合併症が有意に増加するために,現在ではかなり胃洗浄の適応は限られている.最近では胃洗浄は救命救急センターでさえも稀に施行される程度である.
毒物中毒の治療は,①全身管理,②吸収の阻害,③排泄の促進,④解毒薬・拮抗薬の投与の4大原則からなる.「吸収の阻害」とは毒物が体内に吸収される前に取り除くことで,表1に示した方法がある.経口摂取による毒物中毒に対しては,催吐,胃洗浄,活性炭の投与,全腸洗浄,下剤の投与などの方法があるが,胃洗浄は胃内に残留する毒物を胃管によって回収する方法である.
経口摂取による毒物中毒に対しては,以前は胃洗浄はルーチンで行われていた.また,“毒物中毒を繰り返さないための懲罰的な意味”もあると,もっともらしくいわれていた.しかし,現在ではEBMに基づき胃洗浄の適応は大きく見直されている1, 2).その最大の根拠は,「胃洗浄が毒物中毒の予後を改善するというエビデンスがない」一方で,「胃洗浄によって合併症が有意に増加する」ためである.
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