④側頭部の頭痛

Case

抜歯後疼痛を訴え来院した側頭部痛患者

患者：58歳，男性．

主訴：左上顎周辺から側頭部にかけての痛み．

既往歴：高血圧（内服加療中）．

アレルギー：カルバマゼピンにて薬疹．

現病歴：2年前に左上顎歯を抜歯し，しばらく後に同部位周辺から左側頭部にかけての痛みが出現．近医を受診し，抜歯後疼痛，症候性三叉神経痛との診断にてカルバマゼピンを内服し，星状神経節ブロック（stellate ganglion block : SGB）を施行されたが，カルバマゼピンによるとみられる薬疹が出現し，内服を中止した．SGB施行後数カ月は症状改善するものの，再燃を繰り返していた．痛みは次第に増強し，会話や食事，洗髪などが困難となり，ひどい時には左側臥位もとれない状態であり，精査加療目的に当科紹介受診となった．

現症：左上顎・頬部から側頭部にかけての電撃痛．洗髪や洗顔などで増強する．知覚低下，神経学的異常を認めない．

経過：MRI撮影（3D FSE撮像法によるT2強調画像）を行ったところ，蛇行した上小脳動脈による左三叉神経の圧迫像を認めたため，左第2，3枝領域の三叉神経痛と診断した．神経ブロック治療を開始し，現在外来通院中である．

三叉神経痛とは

　三叉神経痛は，最も大きな脳神経である三叉神経が，何らかの理由により刺激され，顔面を中心に痛みを起こす疾患である．