皮フ科医直伝7―よくあるトラブルと対処法
「トビヒ」だ,「ケムシ」だ「ミズイボ」だ―夏の皮膚病はややこしい
中村 健一
1
Kenichi Nakamura
1
1おゆみの皮フ科医院
pp.561-564
発行日 2004年7月1日
Published Date 2004/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100976
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トビヒが簡単に治らない2つの理由(図1)
伝染性膿痂疹,すなわち「トビヒ」は夏になると急に増加する.外来待合室は皮膚がただれた小児でいっぱいになる.トビヒの治療に一定の「マニュアル」はない.皮膚科の教科書をいくら読んでも,抗生物質を使用しシャワーを浴びてください云々と記載があるだけで,いったい何をどうしたらいいものか困る.開業当初はゲンタマイシン(ゲンタシン(R)軟膏)を塗り,ガーゼで覆い,抗生物質を1週間ほど内服させるという治療で何とか治るので,「こいつは楽だぜ」と思ったものだ.当時は,「あぁ,トビヒですよ.すぐ治りますよ,任せてください」などと威張っていた.
ところが,ある時から様子が変わってきた.どうにも治らない症例が増え出したのである.いつも当医院に来てくれる患者さんを治せない,あの情けない気持ちはどうにも悔しい.たかがトビヒで大学病院へ紹介するのもカッコ悪い.なんで治らないのか? 細菌培養してみると,なんとこれがあの「MRSA」であった.開業医の外来現場で,MRSAは増加する一方なので,ぜひ注意してほしい.「すぐ治りますよ」などとうかつに言ってはいけないのだ.経験上,アトピー性皮膚炎の小児,あるいは医療関係者の子どもは治らない例が多く,MRSAを疑うべきであろう.
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