読書療法 患者にすすめるこの1冊[26]
『祝!中古良品 アカセガワ版養生訓』
名郷 直樹
1
1社団法人地域医療振興協会地域医療研修センター
pp.82
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100852
- 有料閲覧
- 文献概要
作者の赤瀬川原平は,ずいぶん前,流行語にもなった「老人力」の作者でもある.話題になったわりには,みんな相変わらずボケの恐怖におののく毎日である.ボケを老人力がついたとは,誰も考えない.老人力はただのブームに過ぎなかったのか.そんな反省があるのかわからないが,今度は中古良品である.作者自身のおねしょが治るまでの自伝から始まり,貝原益軒の養生訓をひいて,現代にどう生かすかを書きつつ,人間は中古良品であると説く.実はおねしょは克服されていない.克服されないうちに治る.そのことが,年老いて自分の中古の部分と重なる.克服することではない,治らなくてもいいというのでもない,現実な解決法の必要性について作者が考えたこと.
前衛芸術家の作としては保守的な内容で,個人的にはいささか不満も残るが,万人が読みやすい本になっている.なんといってもボケを受け入れるのは難しい.中古良品ということなら,もっと一般に通用しやすいと思ったのかどうか.確かに「老人力」は少し突き放しすぎた.おねしょが治らないでいいとは言えない.そこを自分の高齢化に重ねていく.中古というだけでなく,中古良品になることを目指す.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.