特集 帰してはいけない外来患者
帰してはいけない外来患者を嗅ぎわける―正しい臨床判断のための認知心理学
宮田 靖志
1
1札幌医科大学地域医療総合医学講座
キーワード:
問題表象
,
ヒューリスティクス
,
認知反応傾向
,
semantic qualifier
,
illness scritpt
Keyword:
問題表象
,
ヒューリスティクス
,
認知反応傾向
,
semantic qualifier
,
illness scritpt
pp.16-20
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100832
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医療の知の不確実性と臨床判断
われわれの日常診療は不確実性に満ちている.①問題解決に必要な情報は時間をかけて収集されるので最初からは利用できない,②問題がダイナミックで解決のプロセス中に変化する,③問題解決の方法はその状況に特異的で一般化できないことが多い,④問題がいつ解決されたのか不明確であり,不確実な状況でいつ解決のための探索をやめるのかの決断に迫られる,⑤病状により完全な情報収集ができる前に治療を開始することも多い,⑥患者が完璧で正確な情報を提供してくれるとは限らない,⑦患者は診断がつかないまま治療され治っていく1).われわれはこのような状況の下で,しかも圧倒的な時間制約からプレッシャーを受けながら多くの患者を診察しているのである.往々にして,このような診療状況のなかで医師と患者が抱く不確実性への不安が,過剰診療や不適切な医療資源利用につながっている.ここで,“われわれの仕事は確実性を得ることではなく,最適な治療決断をするために十分な程度に診断の不確実性を減少させることである”ということを肝に銘じ2),正しい臨床判断(clinical judgment:患者をケアする際に不確実性のもとで推論を働かせること)1)を行うことが重要であろう.
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