プライマリ・ケア研究

　本稿の読者として，開業したいが研究活動から離れてしまわないかという危惧を抱いている勤務医や，開業して数年経つが，何か研究はできないだろうかと考えている方々を想定したい．また，ここで述べるプライマリ・ケア研究とは，地域に根ざした開業医という特有の立場を生かした研究と解釈していただきたい．

開業医による研究は必要か

　自分の体験で恐縮だが，筆者は，日本で研修した際，地域の中核病院から都心の企業クリニックなど，さまざまな現場で診療を行う機会に恵まれた．そこで印象に残ったのは，診療の場によって，来院する患者らの訴えが異なり，同じ症状でも原因疾患にかなりのバラツキがあったことである．また，とくに診療所の場合，来院者の症状の鑑別診断や疾患の管理について文献検索を試みても，エビデンスに基づいた論文を見受けることができなかった．