特集 開業医の魅力に迫る
日本の開業医―その歴史と文化
小松 真
1,2
1日本プライマリ・ケア学会
2小松病院
キーワード:
プライマリ・ケア
,
家庭医
,
自由開業医制
,
診療所機能
,
医療文化
Keyword:
プライマリ・ケア
,
家庭医
,
自由開業医制
,
診療所機能
,
医療文化
pp.292-296
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100786
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わが国での近代医学の始まりは,明治7(1874)年の医制施行にあり,その根幹は自由開業医制をとっています.医師であれば日本のどこでも,診療科を自由に選んで,医業を行う(開業)ことができます.統制的な医療保険制度の現在でも,自由開業医制は維持されています.日常的な診療の70%は開業医によって提供されており,世界に誇れる制度として高く評価されていますが,遺伝子レベルに達した医学医療の急速な進歩と,21世紀における社会構造の激変により,病院と診療所との関係,そして国民と医師との望ましい信頼関係について,新たな対応が求められています.とくに診療所の機能と構造は,ここ数年で大きく変わると考えられます.このような背景のなかで,開業医の歴史と文化のなかから,魅力ある開業医の将来をみつめてみたいと思います.
開業医の歴史的文化的背景
日本でも古くから,病める人を治し癒やす業として,町や村に施療所が自然発生的に設けられていました.欧米のように教会に付属した宗教的色彩は少なかったようです.江戸中期からは杉田玄白が江戸で,本居宣長が松坂で,上田秋成が大阪で,それぞれ今でいう開業医としての形を整え,後輩の養成も行ってきました.動けない病人に対しては,患家に赴いて施療(往診)を行った記録もあります.今でいう“町のお医者さん”という,地域を基盤とした家族ぐるみの医療(家庭医)の原形があったわけです.江戸中期から末期にかけて,漢方に加えポルトガル,オランダ医学が入り,医療の近代化の足がかりとなりました.
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