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◆突然発症した背部痛は,整形外科的な疾患から心血管系の疾患まで多彩である.その中には生命にかかわるものや機能的予後に影響する疾患があり,注意が必要である.
Case
突然の背部痛を主訴に来院した46歳男性
患 者:46歳,男性.
主 訴:突然の背部痛.
既往歴:2年前に,検診で高血圧を指摘されるも放置.
生活歴:喫煙20本/日×23年,ビール2~3缶/日,職業;建設業.
現病歴:7月6日~8日にかけてカボチャなどを運ぶ作業を繰り返した.7月9日深夜3時に突然背部痛が出現.痛みは持続性で軽減がみられず,冷汗を伴っていた.悪心・嘔吐なし.胸痛はなかった.あまりに激しい背部痛であったため,救急車にて当院救急室へ搬送された.
来院時身体所見:血圧230/100 mmHg,心拍数80/分,呼吸数20/分,体温36.5℃.頸静脈の怒張なし.心音は整・雑音なし・S4(+).呼吸音は清.腹部は軟・腸蠕動音も異常なし.上から中背部に全体的な自発痛あるもTh4レベルの傍脊柱部で圧痛強い.両上下肢の血圧に左右差はみられなかった.
検査所見:血算;WBC 7,700/μl,Hb 15.4 g/dl,Ht 45.7%,Plt 30.2万/μl.生化学;Na 137 mEq/l,K 3.5 mEq/l,Cl 99 mEq/l,BUN 13 mg/dl,Cr 0.7 mg/dl,Glc 138 mg/dl,CK 184 IU/l.
胸部単純X線写真:図1参照.
心電図:正常範囲内.
今回のケースも,『JIM』誌2002年9月号と同様に背部痛を主訴に来院した患者であるが,本症例は急性発症の背部痛であり,緊急検査や,まず重篤な疾患の鑑別などが必要であった.
患者は比較的若く,高血圧が指摘されたこと以外はとくに大きな既往もなく過ごしていた.しかし,救急外来受診した際の病歴聴取では,夜間睡眠時に突然発症した背部痛であり,症状も激烈であった.初診医は当然のことながら心血管系の疾患,とくに大動脈解離を除外すべく診察と検査を始めた.診察上,高血圧は認められたが,四肢血圧にも左右差がなく,心雑音なし,背部に圧痛を認めるのみであった.心電図でも明らかな虚血性心疾患を示す所見はみられず,胸部単純X線写真でも縦隔の拡大,心拡大,胸水などは認められなかった.
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