特集 しびれにご用心
症例から学ぶしびれの診療
上肢のしびれ
篠原 孝明
1
1名古屋大学大学院医学系研究科手の外科学
キーワード:
手根管症候群
,
正中神経
,
しびれ
,
筋萎縮
,
女性
Keyword:
手根管症候群
,
正中神経
,
しびれ
,
筋萎縮
,
女性
pp.718-720
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100410
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Question & Answer
Q:手根管症候群の診察で留意することは?
A:患者は必ずしも正中神経領域に限局した症状を訴えるとは限らないので,しびれ,知覚障害の範囲や筋萎縮の部位などをあらためて診察で調べることに留意する.また,糖尿病性神経障害,頸椎疾患,回内筋症候群などとの鑑別が必要であることを念頭におく.
問診・診察
手根管症候群は,手関節掌側の手根管内で正中神経が圧迫されて生じる,最も頻度の高い絞扼性神経障害である.原因は,屈筋腱腱鞘炎,手関節周辺骨折後の変形,透析によるアミロイド沈着,ガングリオンなどの腫瘍性病変などが挙げられるが,ほとんどの症例は原因を特定できない特発性手根管症候群である.糖尿病,甲状腺疾患,母指CM関節症の合併や,女性,肥満,妊娠などが危険因子として知られている.日常臨床では,中年以降の女性や妊婦に多くみられる.症状は,手関節より遠位の正中神経領域(母指,示指,中指,環指橈側)の疼痛,しびれ,知覚障害であり,進行すると母指球筋の萎縮をきたし,ボタンかけなど母指の繊細な動きができなくなる.
問診では,疼痛,しびれ,知覚障害の部位,母指巧緻性障害の有無を聞くが,正中神経領域に限局した症状ばかりでなく,手全体のしびれ感や,肘や肩まで痛みを訴えることもある.夜間痛の訴えが比較的多く,手を振ることにより症状が軽くなる傾向がある.屈筋腱狭窄性腱鞘炎では,朝のこわばり感やしびれを訴えることもあるので注意を要する.
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