Editorial
抗菌薬とコウセイブッシツ
藤沼 康樹
1
1日本生協連医療部会家庭医療学開発センター
pp.605
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100386
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今から7年前,アイルランドの首都ダブリンで行われたGP(家庭医)の学術会議に参加する機会があった.一つのセッションで,若いGPが診療所における抗菌薬の使用に関する研究結果を発表していた.気管支炎症状のある患者には抗菌薬を投与すべきでないという結論であったが,このあとの質疑応答が印象的であった.ある年配のGPが質問に立ち「あなたの発表は非常にエレガントな研究だと思う.では私から会場の皆さんに質問したい.もし,あなた方がこのような病気になったら抗菌薬を処方してほしいかどうか.処方してほしいと思う方は手をあげてください」すると,会場の多くの参加者が手をあげ,その後会場は爆笑に包まれたのであった.そして,壇上の若いGPの居心地の悪そうな表情が今でも思い出される.
「先生,かぜをひいて熱が高いからコウセイブッシツをいただけますか?」という患者さんにしばしば出会うが,コウセイブッシツという言葉にはしばしば特別な意味が付与されるようだ.まさに,解釈モデルの宝庫であるといえるだろう.その時「ウイルスにはコウセイブッシツは効きませんから,コイセイブッシツ出すのは意味ないですよ」と答えるだけでいいのだろうか.なぜコウセイブッシツが欲しいのかと,自分の診療所で集中的に患者さんに聞いてみたことがあるが,
1.コウセイブッシツは病気が重い時にのむ薬である.
2.コウセイブッシツは病気の原因(悪者)をやっつける薬である.
という理由が多かった.
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