交見室
「早期に筋層浸潤へ進展した原発性膀胱上皮内癌」の注目点/癌告知について思うこと
花井 淳
1
1市立堺病院病理・研究科
pp.539
発行日 1998年6月20日
Published Date 1998/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902369
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本例(福谷恵子・他 臨泌52:51-54,1998)は比較的若年の膀胱CIS症例であり,血尿,尿細胞診持続陽性,膀胱容量の減少にて膀胱尿道全摘の適応となった。手術材料については,病理学的に詳細に検索された貴重な症例である。本文の考察中で膀胱CISに関する拙著(臨泌51:357-366,1997)を引用していただいているが,残念ながら私たちの提案した変性型,あるいは活性型のいずれにも当てはまらない症例とのことである。私たちもしばしば両型の混合型を経験することもあり,そのような症例なのかもしれない。しかし,提示された細胞診や生検病理組織の写真をみる限りでは,剥離傾向の強いCIS変性型のように思われる。また,既往歴で剥離性膀胱炎が続いていた点もCIS変性型が主体であった可能性が残る。この点はあくまで一読者の見方であって,実際に検索された著者の意見を尊重すべきであろう。
次に,この症例にはもう1つ大事な点がある。それは論文図3の腫瘍分布の中でT1の部位が散在してみられることである。それらの部位にはCISの腫瘍細胞と同じ像(異型度)の細胞が浸潤しているのであろうか。また,T2の部位ではどうか。私たちは,このように多発する腫瘍結節を伴うCIS変性型をしばしば経験しているが,それらの結節はCISの病変の腫瘍細胞とは細胞像が異なり,分化度の高いTCC, G1〜2であることが多い。
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