増刊号特集 前立腺疾患'96
前立腺肥大症
治療法の選択と実際・経尿道的治療
経尿道的治療をめぐるcontroversy
小柴 健
1
,
内田 豊昭
1
Ken Koshiba
1
1北里大学医学部泌尿器科
キーワード:
前立腺肥大症
,
経尿道的治療
Keyword:
前立腺肥大症
,
経尿道的治療
pp.97-101
発行日 1996年3月30日
Published Date 1996/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901732
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はじめに
前立腺肥大症の手術は,かつては肥大し排尿障害の原因となっている腺腫を完全に除去するテクニックに重きがおかれていたが,近年になって必ずしも腺腫の完全切除にとらわれない方針に変わってきた。この方針の転換を抜きにしてこれからの前立腺肥大症の治療を論ずることはできない。すなわち程度の差こそあれ中年以後の男性の前立腺に腺腫はきわめて高率にみられるものであり,排尿障害の原因となってはじめて治療の対象となることから,治療も排尿障害の原因除去を目標とするように変わってきた。とくに80歳以上の高齢者の場合には,以後の腺腫の増大傾向は比較的緩徐となってくるので,腺腫の完全除去を図っていたずらに侵襲を多くするよりは,尿の通路さえ十分につけておけば排尿障害の再発をみることは少ないはずである。また前立腺肥大症の手術にまつわる合併症の多くは腺腫の完全除去にかかわればかかわるほど起こりやすくなる。医師たるものはできるだけ安全にかつ患者にとって楽な手術で排尿障害の原因を取り除き,患者に満足してもらうことを目標とすべきである。
その故か,少なからぬ苦痛を伴い入院期間も長い恥骨上式,恥骨後式,あるいは会陰式の前立腺摘除術はどれも近年ではめっきり減少の傾向にあり,それらに代わってTUR-Pが前立腺肥大症手術の主流となってきている。TUR-Pはかつては50g程度までの中等度の腺腫までを適応としていたが,現在では切除鏡の改良が進み,100gを超す大きさの腺腫もさしたる苦労もなく行えるようになってきた。
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