Coffee Break
待ちの治療
寺島 和光
pp.176
発行日 1994年3月30日
Published Date 1994/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901176
- 有料閲覧
- 文献概要
小児の泌尿器科疾患の大部分は先天性である。このため自然治癒などということはありえないということで,いったん治療が必要と判断されたら早期に手術などを行っていた時代があった。現在はもちろん違う。水腎症(特に胎児期,新生児期)や水尿管症(巨大尿管)は自然治癒・改善が稀ではない。多嚢腎multicystic kidneyも経過とともに自然退縮する例が多く,摘除することはごく稀となった。プルンベリー症候群にみられる上部尿路拡張に対しても,手術をすることは今や少ない。いっぽう尿道下裂などは,以前だったら無視されていたようなごく軽度の症例でも今日では積極的に手術するようになり,手術時期もずいぶん早くなった。VURも逆流腎症の概念が導入されてからは手術適応が拡がったようである。
このように同じ先天性疾患といっても治療方針や時期は千差万別であり,このことは小児泌尿器疾患を扱う上で非常に重要であり,医師は十分認識しなければならない。これに関連して昔のことを思い出した。かつてアメリカでレジデントとして働いていた時の話である。関連病院の一つ(V.A.Hospital)の泌尿器科のチーフはレジデント達にむかって常々,「おれは君達から患者を守る(protect)ためにいるんだ」と言っていたものである。何しろアメリカのレジデントときたらやる気まんまんの連中が多く,ほんの少しでも手術適応があればすかさず手術をやってしまっていたのである。
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.