特集 待ち時間解消はどこまでできるか
「待ち」の総体的環境
山下 哲郎
1
1名古屋大学工学部社会環境工学科
pp.734-737
発行日 1996年8月1日
Published Date 1996/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901877
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医療の社会保障が進むにつれ,病院が広く多数の患者を限られた費用の中で診療を行うために,能率的経済的な運営を行う方策として,診療機能の中央化に向いたとき,吉武は,以前は各科の窓口を訪れれば,ひととおりの診療を受けることのできた患者は,この中央化によって,受付・診察・治療・放射線などの検査・会計・薬局などの窓口を転々と移動し,それぞれである時間を待つことになるのではないかとの危惧を述べている.つまり中央化による能率化は,患者を溜めて(待たせて)おいてさばくことによって可能になるからである,と1).
この指摘は,今でも新鮮に受け止められるものであるが,本質的には,中央化に因を求めるのではなく,医療の高度化に伴って,診断に様々な検査が必要になったことが,患者を移動させ,またそれぞれの場所で待たせる結果を生んでいると考えたほうが良い.ここでは様々な「待ち」の様態を,患者・スタッフ・建築・システムといった総体的環境として捉え,与えられた「待ち時間の解消」をテーマとした議論に参加してみたい.
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