小さな工夫
吸引管を利用した安全で効果的なリンパ節郭清術
頴川 晋
1
,
内田 豊昭
1
1北里大学泌尿器科
pp.347
発行日 1993年4月20日
Published Date 1993/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900942
- 有料閲覧
- 文献概要
悪性腫瘍根治手術においてリンパ節郭清術は重要な手技の一部であり,そのできばえにより手術の成否が決まるといっても過言ではない。従来,リンパ組織は鋭的,鈍的に剥離されたり,キューサなどにより液状に分解されて摘除されてきた。これらの方法では,時に血管枝を誤って切断してしまい思いもよらぬ出血を見たり,大血管周囲にリンパ組織の断片が残存してしまったり,あるいは装置自体がきわめて高価であるなど,問題がないとは言い難い。
筆者らは,リンパ節郭清時に吸引管による鈍的な剥離を愛用しているので紹介したい。これはリンパ組織を血管に沿って切開した後,組織の一端を把持し,牽引しつつ,吸引管により血管の表面をこするようにして粗な結合織を剥離するというものである。この際,吸引管の側孔は開けておき弱い陰圧がかかるようにすると,脂肪組織が吸引管を塞いでしまうこともなく,驚くほど容易に剥離を進めることができる(図1,2)。適宜,鋭的な剥離をも併用するが,この方法を用いれば,
1)リンパ液,血液などが持続的に吸引されるので良好な術野を保つことができる。
2)小血管枝,太いリンパ管などは切断されず同定が容易であるので処理しやすい。
3)血管に付着し,除去しにくいリンパ組織などもきれいに除去できる。
4)特殊な設備や装置を必要とせず,手技も非常に容易である。
などの利点がある。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.