Coffee Break
基本の大切さ
小野寺 昭一
pp.124
発行日 1993年3月30日
Published Date 1993/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900868
- 有料閲覧
- 文献概要
血尿を主訴とした患者を前にした場合の膀胱鏡検査は,泌尿器科医にとって基本中の基本といえるが,種々の条件が重なるとこの基本を怠ることがあり,後に非常に恐い思いをすることがある。患者は50歳の男性,主訴は血尿であったが,その男性は当院の職員で,内科学教室の実験動物を管理するのが主な仕事であったため,内科に入院して血尿の精査を受けることになった。内科ではDIP,腹部のCT,ECHOなど施行し右腎下極の腫瘍と診断され,血管撮影まで行った後に手術を目的に,1992年3月泌尿器科に依頼された。診断が確定していたため,それ以上の泌尿器科的検査は行わず手術を施行。腫瘍は腎下極に限局したものであったため,腎部分切除にて摘出した。病理学的には,Grade2,T2の腎細胞癌であり,術後アドリアマイシン,ビンブラスチンによる化学療法を計5コース施行した。最初の1コースは入院中に,残り4コースは外来で施行したが,その間,顕微鏡的血尿は継続してみられ,時に肉眼的血尿も出現していた。血尿については気になってはいたものの,腎の部分切除術の後でもあり,化学療法を行いながら施行したCTやDIPで,腫瘍の残存や再発を疑わせる所見は全くみられなかったため経過観察に留めていた。同年8月,予定の化学療法が終了した時点で凝血塊を含む強血尿出現,膀胱鏡検査を施行,膀胱頸部に非乳頭状,広基性の膀胱腫瘍を認め,至急入院としTUR-BTを行った。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.