Japanese
English
特集 前立腺肥大症の薬物療法
Ⅰ.ホルモン系薬物
B.組織学的変化を中心に
Histological Effects on Benign Prostatic Hyperplasia Treated with Hormonal Agents
原田 昌興
1
Masaoki Harada
1
1神奈川県立がんセンター臨床研究所病理
1Laboratory of Pathology, Kanagawa Cancer Center Research Institute
キーワード:
前立腺肥大症
,
アンチアンドロゲン剤
,
組織学的増生
Keyword:
前立腺肥大症
,
アンチアンドロゲン剤
,
組織学的増生
pp.281-287
発行日 1992年4月20日
Published Date 1992/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900566
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はじめに
前立腺肥大症の成因についてはいまだ十分に解明されていないが,加齢に伴う性ホルモン環境の変動が重要な要因であることには疑いがない1,2).前立腺は実質腺組織と間質により構成されており,肥大症は病理学的に結節性過形成と位置づけられ,腺組織の過形成・肥大によっても,あるいは線維組織および平滑筋を主要構成要素とする間質の増生によっても発生し得る.したがって肥大症は組織学的に腺性過形成,間質性過形成および腺・間質複合過形成の3型に分類出来る3)(図1〜3).しかし,実際の肥大症症例を組織学的に観察すると,純粋の間質性過形成は近位尿道周囲域に発生する結節以外ではほとんどみられず,肥大症の好発部位である前立腺移行域に発生する結節の多くは腺および間質組織両者の複合的過形成状態を示している3〜5).
前立腺肥大症の動物モデルは犬において認められるとともに,アンドロゲン投与により誘発することが出来る6〜8).この犬で見られる肥大症は組織学的には腺性過形成を示し,間質成分は乏しく,ヒトの肥大症とは異なるのではないかとされていたが8),近年アンドロゲンと併用してエストロゲンを投与することにより間質増生を伴うヒト肥大症に近似した病変の誘発されることが示され9),犬とヒトで見られる過形成に本質的な相違はなく,腺性か腺・間質複合型かは単なる量的な違いに過ぎないことが指摘されている2).
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