特集 最新版! 筋層浸潤性膀胱癌の診断と治療―アンメットニーズはどこまで埋まったか
企画にあたって
最新版! 筋層浸潤性膀胱癌の診断と治療―アンメットニーズはどこまで埋まったか
中川 徹
1
1帝京大学医学部泌尿器科学
pp.217
発行日 2023年3月20日
Published Date 2023/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413207756
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転移のない筋層浸潤性膀胱癌に対する標準治療は言うまでもなく膀胱全摘術であり,不幸にも転移再発を生じた場合はプラチナ製剤による全身化学療法が実施されてきました.しかし膀胱全摘術後の5年生存率は50%程度と,到底満足のいくものではありません.また,膀胱全摘術は侵襲性が高く,特に高齢患者では合併症が懸念されます.さらに,化学療法は当初奏効してもいずれ不応となります.高齢の患者に手術は安全に実施できるのか? 予後を改善する周術期治療は? 一次化学療法が無効となった後の対応策は? これらの課題は永らく大きな進歩がなく,膀胱癌の診療における大きな未解決課題,“アンメットニーズ”でした.
近年,筋層浸潤性膀胱癌の診断・治療に大きな変化の風が吹いています.画像診断による深達度評価,ロボット手術による膀胱全摘術の低侵襲化,新たな周術期薬物療法,有効な二次・三次治療薬の承認などです.ロボット手術や免疫チェックポイント阻害薬は,前立腺癌や腎細胞癌での経験をもとに,膀胱癌に対しても保険収載後は急速に普及しています.また,切除を全摘術ではなく部分切除にとどめQOLを維持した治療法も模索されています.分子生物学的背景の解明に基づくリキッドバイオプシーも,低侵襲かつ高感度な診断法として将来の臨床応用が期待されています.
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