書評
がん薬物療法のひきだし―腫瘍薬学の基本から応用まで―松尾宏一,緒方憲太郎,林稔展 編
高野 利実
1
1がん研有明病院乳腺内科
pp.853
発行日 2020年10月20日
Published Date 2020/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413207037
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病院薬剤師が主人公のドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(フジテレビ系,2020年)が話題になっている.患者さんに寄り添い,薬剤師として悩みながら,知識と経験に基づいて行動していく主人公.これまで,いろんな病院で,優秀で熱心で魅力的な薬剤師に支えらえてきた私としては,○○さんや△△さんなどの姿を重ねながら,このドラマを楽しんでいる.現実離れした描写や,高圧的すぎる医師の姿には批判もあるようだが,薬剤師の想いや仕事ぶりはうまく伝わっているように思う.チーム医療に欠かせない存在としての薬剤師がこのようにクローズアップされるというのは,チーム医療に救われている腫瘍内科医としても,とても喜ばしいことである.医師の指示のもと,薬剤の管理だけを行うのではなく,患者さんのために,チーム医療の中心となって活躍することが,これからの薬剤師に求められる役割であり,それこそが,このドラマの重要なメッセージであろう.
がん薬物療法の分野では,進歩のスピードが加速しており,薬剤師が身につけておくべき知識も膨大なものになっている.今の時代は,知識を全て身につけているというよりは,知識のひきだし(エビデンスを検索する能力)こそが求められているともいえる.いずれにしても,これらの知識を背景に,患者さんや他の医療従事者と対話し,より適切ながん薬物療法をめざしていく必要がある.そんなときに手元にあると役立つのが,『がん薬物療法のひきだし―腫瘍薬学の基本から応用まで』である.
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