書評
「がん薬物療法副作用管理マニュアル 第2版」—吉村知哲,田村和夫【監修】 川上和宜,松尾宏一,林 稔展,大橋養賢,小笠原信敬【編】
岩本 卓也
1
1三重大学医学部附属病院薬剤部
pp.1115
発行日 2021年10月1日
Published Date 2021/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201901
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「いかに副作用を軽減して治療を継続するか」。われわれががん薬物治療を開始するときに必ず考えることである。いくら最新のがん治療,エビデンスの高い治療であっても,実際に治療に耐えることができなければその恩恵を得ることはできない。また,がん治療に前向きな患者ばかりではなく,副作用への心配から自ら治療の道を閉ざしてしまう方もおり,そのような患者に対しては一層丁寧な説明が必要になる。このようなとき,実践に強い参考書,副作用について素早く整理できる本が手もとにあると心強い。本書は,好評を博した初版の刊行から3年を経て,さらに内容を充実させた第2版であり,医療従事者に求められる副作用管理のポイント,経験に基づくアドバイスが随所に挿入された実践向けの本である。もちろん,患者に要所を押さえた説明をする際にも最適である。
本書は,抗がん薬投与後に発現する主な副作用を取り上げ,その発現率,好発時期,リスク因子,評価方法をまとめている。また,典型的な症例提示もあり,副作用アセスメントの進め方をイメージできる。そして,第2版では,「患者のみかたと捉えかた」 を新設し,腫瘍内科医が身体所見,検査,副作用の評価方法を記載しており,診療の進め方を理解するのに役立つ。また,各論では「味覚障害」「不妊(性機能障害)」「栄養障害」が新たに追加され,「免疫関連有害事象(irAE)」の項目も充実している。
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