書評
腎臓病診療でおさえておきたいCases 36―慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科 編/伊藤裕 編代表 脇野修,徳山博文 責任編集
槇野 博史
1
1岡山大学
pp.491
発行日 2019年6月20日
Published Date 2019/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206657
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腎臓病診療には血尿,蛋白尿,腎機能の低下といった臨床所見,その原因となる疾患の臨床検査,さらに腎生検で得られた腎組織を免疫組織化学,光学顕微鏡,電子顕微鏡で探索することによって病因診断がなされ,それらは有機的に関連した複雑な診断体系となっています.
その中でも病理診断は重要な位置を占めており,腎組織のスナップショットから病態,さらにその時間的・空間的な経過を説明できるようになるにはかなりの時間と訓練が必要と思います.本書の序文でも述べられていますが,腎病理診断は人工知能(artificial intelligence : AI)に完全に置き換わってしまうでしょうか? 腎臓病にはまだ確立していない疾患概念があり,臨床症状,検査所見,病理所見から新しい疾患概念を提出することは,まさしくクリエイティブな仕事であり,AIには不可能と思います.また腎疾患の経過を腎生検組織から読み取って,患者さんの病態の「物語」を構築し,それを患者さんの心にわかりやすく響かせることもAIには不可能です.さらに腎疾患診療における答えのない臨床的ジレンマに対峙したとき,問題解決能力を発揮して患者さんを導いていくこともAIには困難と思います.つまり腎臓病診療には「人間的な仕事」が多く残されています.
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