文献抄録
膀胱移行上皮癌の腔内治療後に発見される前立腺移行上皮癌について
pp.916
発行日 1988年10月20日
Published Date 1988/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204853
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膀胱癌に対して抗癌剤の腔内注入治療では,膀胱癌の経過に主眼がおかれるために前立腺での癌発生については見逃されていることが多い。著者らは1983年より1986年までの3年間に,115名の表在性膀胱移行上皮癌(T0,T1,TIS)に対してThiotepa,MHC,BCGなどの抗癌剤による腔内注入療法を行って,このうち男性63名について治療中あるいは治療終了後に,10名の前立腺移行上皮癌を発見して,これらについて検討を加えて報告している。
患者は43歳から76歳までの10名で,この10名中7名は腔内治療前および治療中に前立腺生検を施行したが,組織所見で癌は発見されず,残りの3名は膀胱観察のために行った頻回の内視鏡検査で,前立腺尿道部の粘膜所見は正常で前立腺癌は疑われなかった。患者10名は前立腺癌の発見までにThiotepa,MMC,BCGのいずれかによる腔内治療を最小1コースをうけており,大多数の患者は6〜8週の標準治療コースをうけた。第1回のコース治療終了後,前立腺癌発見までの平均経過月数は17ヵ月で,最短3ヵ月から最長42ヵ月であった。前立腺癌の発見は,6名が経尿道的切除組織により,4名は膀胱前立腺摘出時の組織から偶然発見された。10名中5名は膀胱癌は消失していたが,細胞診では陽性と判定されていた。発見された前立腺癌のstageは,5名は膀胱の癌より更に浸潤度の高いものであった。
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