文献抄録
腎細胞癌の骨盤腔転移に対する動脈栓塞治療
pp.618
発行日 1984年7月20日
Published Date 1984/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203849
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米国においては年間17,000例の腎細胞癌の患者がおり,これらは診断をうけた時点で約1/3の症例に遠隔転移が認められている。そして転移巣の30〜45%に脊椎,骨盤骨にhy-pervascularの転移があり,転移巣の疼痛やその処置は大きな問題である。
著者らは5例の腎癌による骨盤骨およびこれに隣接する軟部組織に広範な転移形成のある症例に対してhypogastric art.の栓塞術を施行した成績について述べている。いずれの症例も偏側の骨盤骨転移であるが,症例はすべて激しい疼痛に悩まされ,これまでに疼痛に対して各種免疫療法,放射線照射,黄体ホルモン投与などをうけたが,ほとんど無効であつた。動脈栓塞術は転移の反対側の股動脈からカテーテルを入れhypogastric art.の栓塞を行い,栓塞剤として吸収性のゲラチンスポンジおよび金属性コイルを用いた。栓塞後の結果は,全例に劇的に疼痛の寛解と全身状態の改善がみられた。5例中4例には転移巣の縮小効果があり,また2例では骨の石灰化の出現効果があつた。しかし,1例では栓塞術の効果は十分でなかつた。副作用としては軽微なものであつたが以前に6,000radsの照射をうけた1例に比較的難治性の貧血性潰瘍の発生をみたが,治療は問題にする程ではなかつた。これら5例の予後では,4例は6カ月から18カ月の間では病状は安定していたが,1例に6カ月後に脳転移が発生死亡した。
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