Urological Letter
膀胱粘膜の黒褐色の斑点/膀胱頸部硬化症と経尿道的前立腺切開
pp.254,280
発行日 1981年3月20日
Published Date 1981/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203115
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69歳の男子が来院した。10年も前に前立腺癌の診断を受け,その当時TURを受けた、そしてIowa大学に紹介され,そこでは会陰部を切開しその部から前立腺内に放射性コロイド金の注射を受けた。その後右腎に結石を生じ1975年に右腎摘出を受けた。尿閉が起こり,1,800mlの残尿をカテーテルで採つてもらつたこともある.ここ1年半ばから自分白身で時々カテーテルで残尿を採つている。1979年7月に心筋梗塞をしたので手術は延期されている。筆者が診察した時には明らかに骨への転移が起こつていた。膀胱を検査したら,膀胱ならびに前立腺部尿道粘膜にも黒褐色の色素沈着が認められた。再発した前立腺癌にTURを行なつた。腺癌であつた。そして色素沈着は硝酸銀によるArgyria (銀沈着症)であることがわかつた。患者は過去1年半の間カテーテリゼーションのあとに必ず0.25%の硝酸銀液を注入されたのである。そのために斑点状の銀沈着が起こつたのであつた。膀胱や前立腺部尿道粘膜の色素沈着は長い間の硝酸銀注入の後には認められる後遺症である。しかし,われわれが前もつて硝酸銀を長く使つていたことを知つていなければドラマティックな所見である。
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