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緒言
脊損急性期に尿路感染を防止し,適切な膀胱訓練を行なつた場合にはカテーテルは一切不要となり,生涯上部尿路は正常に保たれる。しかし,長期間経尿道的留置カテーテルが行なわれたり,排尿困難,尿路感染を放置された症例には,しばしば膀胱尿管逆流が合併し,水腎水尿管から慢性の腎不全へと移行する。
元来,脊損者の水腎水尿管は,膀胱頸部,後部尿道における排尿時の抵抗を除去することが先決であり,VUR防止手術や尿路変更術が先行すべきでない1,5)。この目的のために経尿道的膀胱頸部切除術,外尿道括約筋切開術,陰部神経ブロックまたは切断術が一般に行なわれそれぞれに成果をあげている1,2)。しかしながら中等度から重度にわたる水腎水尿管を有する症例では長期間の尿流停滞,慢性感染の結果,腎盂・腎杯・尿管などの自動的蠕動運動が失なわれ,上部尿路の尿は単に力学的方向に流れる状態になつており,下部尿路通過障害除去のみでは上部尿路の機能不全は是正されない。われわれはこのような症例では膀胱を空虚にした後,双手的に腎部から尿管走行に沿つて膀胱部へ及ぶマッサージを行ない,ついで膀胱部を圧迫し一滴でも多くの尿を排泄させるよう努力させることを試みている。このマッサージを膀胱訓練同様に入念に行なうことによつて著明な水腎,水尿管症の改善を認め,かつVURの消失を見たものを含めわれわれが最近3年間に経験した6症例について具体的に経過を述べてみたい。
In chronic paraplegic patients, who have severe hydronephrosis and hydroureter following long term V.U.R or urinary infection, the renal pelvis and ureters have lost peristaltic movement. For most, obstruction in the lower urinary tract should be eliminated by T.U.R and external urethral sphinctero-tomy. Furthermore, we propose the beneficial effect of manual massage to force retained urine in the upper urinary tract down to the bladder. In 6 cases treated with these methods marked improvement of hydronephrosis, hydroureter and urinary infection were observed lowering B.U.N and serum creatinine.
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