文献抄録
骨盤骨折を伴う後部尿道損傷の治療
pp.799
発行日 1977年9月20日
Published Date 1977/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202418
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現在骨盤骨折による後部尿道損傷の治療に関しては諸家の意見は必ずしも一致していない。後部尿道損傷の治療方針は損傷部位の修復と外傷性血腫や尿溢流に対する処置にあるが,著者らはその治療経験からかかる患者に対してはまず膀胱瘻を設置して3〜4ヵ月後に後部尿道の形成術を行なうことが術後の狭窄発生防止その他の合併症を抑える上で有効であるとしている。
著者らは1960年以降205例骨盤骨折患者を経験し,129例に尿路損傷による血尿を認めたが,明確に後部尿道損傷のあつた20例についてその治療経過を報告している。この20例中第1群の11例は尿道損傷に対して膀胱瘻のみを設置して外傷性局所血腫には自然吸収を待つようにし,3〜6ヵ月後に尿道形成術を施行した。第2群の9名に対しては損傷直後に後部尿道の形成術を行なつた。この両群について比較検討してみると,患者の年齢層はほぼ同様であり,術後の経過観察期間は前者で2年から6年,後者では4年から13年に及んでいる。症例数は少ないが両群の臨床経過では2群の9例中7例に尿道狭窄の発生をみて術後尿道拡張術を必要とし,うち2例は再手術を行なつている。また2例に失禁,3例に勃起不能をみている。また4例に射精困難または不能の状態がつづいており,6例に器械的操作を要するために尿路感染が残存している。一方,1群の11例についてみると,全例に尿道狭窄の発生はなく,また尿失禁・勃起不能例もみていない。
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