シンポジウム 下部尿路感染症の再発要因をめぐつて
尿路感染再発要因としての潜在性機能的下部尿路異常の意義
小柳 知彦
1
Tomohiko Koyanagi
1
1北海道大学医学部泌尿器科学教室
pp.859-864
発行日 1976年10月20日
Published Date 1976/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202238
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女子の頻回再発性尿路感染の機序に関しては古来議論が多いが,従来は膀胱頸部障害や外尿道口狭窄などに代表される器質的通過障害があまりに重視され過ぎたきらいがある。幾分古いデーターであるが,筆者が再発性尿路感染女子153例を検討したところ25例では感染の原因と思われる明らかな原疾患が証明されたが(内,膀胱頸部硬化例は1例のみ),残り128例は原因不詳の単純性膀胱炎であつた。後者について外尿道口径計測を行ない,外尿道末梢部狭小化(DUS)が尿感染再発の原因となる可能性はせいぜい15例(12%)に過ぎず,しかもその大部分は50歳以上の婦女子であつてDUS自体は二次的な変化とも考えられた。すなわち器質的な下部尿路障害は単純性膀胱炎の原因としてあまり意義がなく,むしろ後述のごとく種々の排尿異常を伴つた下部尿路の機能的異常が尿感染再発の個体側の因子として重大なことがわかつた1)。
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