文献抄録
フェナセチンの尿路発癌性について
pp.550
発行日 1975年7月20日
Published Date 1975/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413201995
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芳香族アミンのフェナセチンはすでに1世紀以上にわたつて,鎮痛薬として広く常用されている。しかし今日ではフェナセチン含有薬剤を長期間に多量使用すると,その副作用として消化管潰瘍,腎乳頭壊死,腎盂腎炎,血液変性などを起こすことは良く知られている。特にすでに1895年にRehnにより指摘された発癌性についてはより重大な副作用として考慮されねばならない。すでに文献的に1965年より1973年の間にフェナセチンによる腎盂腫瘍が119例,膀胱腫瘍が5例報告されているが,著者も2症例を報告し本剤常用者の尿細胞診の必要性を述べている。
症例の1人は63歳男性で肉眼的血尿を主訴にして来院。左腎盂腎炎と腎盂腫瘍の診断にて左腎・尿管摘除術を施行。その後約半年して再度血尿が現われ,右上腎杯に腫瘍を発見し,この部の部分切除を施行,その後膀胱にも腫瘍が発生し処理された。腫瘍は悪性度ⅡないしⅢ度の移行上皮癌であつた。この患者は頭痛に対して長期間フェナセチン含有の鎮痛薬を常用していた。他の1例は76歳の女性にみられた同様の腎盂尿管腫瘍例である。
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