見聞記
米国レジデント・システムについて
岡田 清己
1
1Department of Urology, New York Medical College, Flower and Fifth Ave. Hospital.
pp.959-961
発行日 1970年10月20日
Published Date 1970/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413201020
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昔,留学するといえばドイツに行くことであり,エリートだけが日本の代表として数カ月かかつて船で行つたという。家族を日本に残し,粗衣粗食に甘んじ,ひたすらドイツ医学を学んだことは頭の下る思いがする。それにくらべ今はどうだろうか。アメリカには日本人の医者が腐るほどいる。たとえば,大学の同級生90名のうち,過去現在を通じアメリカに留学したものは約40名。彼らのほとんどが家族づれである。家に帰れば日本語を話し,日本食をたべ,アメリカで学ぶというより日本で得た能力を評価してもらい,その報酬として給料を要求する。昔のエリートがベルリン駅頭に立つて感激した話は夢物語といわねばならない。現在アメリカといつても,つい20年前までの北海道または九州と同じ程度の感じではあるまいか。ジェット機で東京—ニューヨーク16時間,金額にして今の日本ならば,20年前の北海道行きと同等であろう。そのためかアメリカ,特にニューヨークは千客万来で,留学生がいちいち報告する必要もないようであるし,また学会報告,論文にしても,その気になれば日本でもただちに手に入るのであるからアメリカにいるmeritも昔ほどはないのではないか。
私事になるが,筆者は1968年7月よりニューヨーク市にあるNew York Medical College泌尿器科,Nagamatsu教授のもとに留学し,2年を経過したところである。
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