文献抄録
小児の副腎腫
pp.686
発行日 1970年8月20日
Published Date 1970/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200972
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Mayo Clinicでは現在まで5例の小児副腎腫症例が経験され,著者はその内3症例について紹介するとともに,現在まで文献的に報告されている36例症例について臨床統計を試みて成人副腎腫と比較している。36例中腎腫瘤を触知されたのは26例であり,16例に肉眼的血尿が見られ,1例が顕微鏡的血尿であつた。全身症状として体重減少,貧血,胃腸障害の現われていた者は14例で,発熱を示したもの4例であつた。これらの症例の予後について見ると,手術中転移が認められて生存しているもの16例中5例,転移の認められなかつた症例は8例中7例が生存している(観察8年から16年)。転移部位について見ると,局所的浸潤5例(21%),腎盂5(21%),腎静脈6(25%),リンパ節2(8%),遠隔転移3(13%)となつており,Mayo Clinicの成人副腎腫476例の転移率と大体同じである。小児と成人と比較した臨床所見では腎腫瘤が小児の方が高率に見られている。血尿の頻度は成人と同率であるが,疼痛についてみると成人では背部に訴えることが多いが,小児では腹部痛をかなりの頻度でみている。腎腫瘍のTriasとして,腫瘤,血尿,疼痛の三症状をそなえるものは成人では10%であるが,小児ではさらに低率である。成人の副腎腫と小児のそれの予後についての比較は観察期間の問題もあり,正確に比較することは困難である。
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