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主催者発表によると200名を超す泌尿器科専門医が参加した研究会での出来事であるが,「尿道炎に関する最近の話題」と題した特別講演を聞いた後,質疑応答があり,座長が淋菌検出法に初診時グラム染色を行っている医師の挙手を求めた。周囲を見渡すと私1人であった。これには座長も驚いた様子であった。あまりに少ない数と今日でも実施している者がいるという事実,両方の驚きであったと思われる。座長には「先生は感心ですね」とお褒めの言葉をかけていただいたが,古色蒼然たるレトリックを用いているととられているようで気恥ずかしい思いであった。反面,グラム染色を行わないで性感染症の治療に当たる泌尿器科医が多い現状と,その姿勢に失望した。これでは聴診器を当てないで診察を行う内科医に似ていると言っても過言ではない。
淋菌性尿道炎の診断の基本は,尿道分泌物のグラム染色であり,グラム陰性の球菌(双球菌)を観察することである。単染色でも診断は可能であるが,ブドウ球菌属のStaphylococcus saprophyticusとの鑑別が必要である。グラム染色でその場で診断をつけ,同時に細菌培養と薬剤感受性を行うことが望ましい。鏡検で淋菌が検出されない場合には,核酸増幅法による検査を行う。『性感染症 診断・治療 ガイドライン2008』(日本性感染症学会発行)によれば,グラム染色・鏡検法は推奨ランクAであり,迅速診断として,極めて有用であり,尿道炎における診断には必須である。淋菌培養も推奨ランクAで,わが国では多剤耐性の淋菌が増加しているので,できる限り培養法を行うことが勧められている。一方,核酸増幅検査法は推奨ランクB~Dである。淋菌とクラミジアなどとの複合感染を想定して,両方の病原体に有効な抗菌剤の選択を議論している場面を目にするが,ナンセンスと言わざるを得ない。初診時グラム染色を行って白血球に貪食された双球菌が検出されれば,淋疾として日本性感染症学会が推奨するセフトリアキソンなどの抗菌剤を用いればよい。非淋菌性であればマクロライド系薬またはキノロン系薬,あるいはテトラサイクリン系薬を投与する。
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