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本書の初版は1997年に上梓され,第一級の教科書として君臨し続けている。「なのに,なぜ,今さら挿入法なのだろう?」というのが,本書を手に取った最初の思いであった。しかし,序にもあるように,大腸内視鏡はこの15年間にpit patternの診断からNBIや超拡大診断,治療領域ではpolypectomyからpiecemeal polypectomy,ESDなどなど,極めて多様な対応が求められてきており,挿入に手間取っているようでは大腸内視鏡医として与えられた使命をはたせないのである。著者の挿入例数はこの15年間に20万件に達したそうであるが,そのキャリアの大部分は自身が開発した拡大内視鏡によっている。本機器は先端硬性部が長く太径でもあり,一般に挿入が難しい。このスコープを自在に操っている中に,挿入技術に一層の磨きがかかり,ついにはartの域に達したのであろう。本書はこうして完成した軸保持短縮法をなんとか多くの内視鏡医に伝えたいという熱い思いにあふれている。
これまでの挿入法はというと,one-man methodの創始者である新谷弘実先生のright-turn shortening(強いアングル操作で先端を粘膜ひだに引っかけ,右回旋しながら引き戻すことで腸管の直線化をはかる)がよく知られている。これに対し,軸保持短縮法ではup-downのアングル操作を控え,可及的に先端硬性部をまっすぐに保ち,管腔の走行を的確に想定しながら,トルクを加えつつ順次スコープを挿入していくことを基本としている。筆者もUPDを用いた著者のライブデモンストレーションを見せていただいたことがあるが,確かに先端部を強く屈曲するようなシーンは一度もなかった。
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