書評
「CT・MRI実践の達人」―聖路加国際病院放射線科レジデント 編
似鳥 俊明
1
1杏林大学・放射線科
pp.206
発行日 2013年3月20日
Published Date 2013/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413103042
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現代医療におけるCT/MRIの重要性は時を経るにつれ増しているようである。規模の大小,地域にかかわらず,日本中の病院のCT/MRI検査室は隙なく詰まった予約をこなすのに忙しく,緊急検査の依頼電話が鳴り響いている。少し気を抜くとCT/MRI検査は心のこもらない流れ作業に堕ちる危険をはらんでいる。そのような現実の中で,本書は「医療の中でますます重要になっている画像検査は,その特性を熟知し,患者の状態から必然性を熟慮した実施がなされるべきである」という理想と熱意が伝わる書である。聖路加国際病院放射線科のレジデントが常にポケットに入れているマニュアルの発展型とも言えようが,全国のCT/MRI検査室に常備され活用されれば,現状の医療現場が少し余裕を取り戻すのではないかとの期待もできる。
主訴,問診,理学的所見,血液検査などから想定された疾患を念頭に置いて,いかに画像検査の組み立てを行うのが望ましいかが,よくまとめられて記載されている。簡潔な記載の中に連日実際に多彩な症例をこなしている自信が垣間見られる。特にCT/MRIの適応に関する文章は明快である。また,MRI検査の推薦シーケンス,断層面の設定が具体的に示されており,さらにその撮像所要時間が逐一記載され強調されているが,現場では大いに参考となろう。すでにプロトコールの確立している施設でも,見直しの材料となるはずである。医療人こそ常に自己に対して批判的でありたい。
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