書評
「CT・MRI実践の達人」―聖路加国際病院放射線科レジデント 編
杉村 和朗
1,2
1神戸大学病院
2神戸大学大学院・放射線医学
pp.952
発行日 2012年11月20日
Published Date 2012/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102952
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胃透視を行うにあたっては,まずはバリウムを作るところから始まり,配合,濃度,添加物,それに加えてフィルムや増感紙についても医師によって好みがあった。単に好みという訳ではなく,エキスパートといわれる医師の写真は明らかに優れていた。透視技術だけではなく,事前の準備やベテラン技師による撮影条件のさじ加減が,二重造影の質に大きな差を与え,診断能に大きく影響していた。画像診断医は単にできあがった写真を読むのではなく,優れた診断ができる写真を手に入れるところから始まっていることを,身をもって教えられていた時代である。
本書の責任編集者である齋田幸久先生といえば,胃透視の第一人者であり,多くの著書や論文を出しておられる。写真を撮るのは技師任せ,できあがった画像をモニターで診断するだけの診断医では高度な診断ができないと常々おっしゃっている。従来の画像診断に比べて,CT,MRIは簡便になっているととらえられがちであるが,患者からいかにして優れた情報を引き出すかによって,診断能が大きく変わってくる。優れた診断を行うには,豊富な経験と知識を基に,CT並びにMRIに習熟した技師をはじめとする医療スタッフとの協力関係によって,診断に適した画像を得ることが不可欠である。齋田先生の,「優れた画像診断を行うには,読影に足る画像を得たうえで,豊富な知識と経験が不可欠である」というマインドは,聖路加のスタッフ,レジデント,医療スタッフに浸透している。それを石山光富医師という優れた診断医に引き継がれ,診断部の仲間を巻き込んでそのマインドを1冊の書にまとめあげたのが本書である。
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