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[1]はじめに
院内感染は,hospital(acquired)infectionまたはnosocomial infectionの和訳であるが,「院」は病院を指すとは限らないため,最近では「病院感染」を和訳として使用することが多い。さらに病院だけでなく医院や診療所など医療を提供する場所で起きる感染症であるため,healthcare-associated infection(医療関連感染:HAI)を使用する場合もある。本項では,いまだ一般的である「院内感染」を用いて解説する。
院内感染は,病院内で病原微生物に接触することにより発生したすべての感染症と定義されている1)。したがって定義上,患者はもちろんのこと面会者や医療従事者なども含むこととなる。さらに入院前に病原微生物と接触し,潜伏期間中に入院し発症した場合は院内感染に含めない。反対に退院後に発症した感染症であっても,病原微生物との接触が病院内であれば院内感染となる。ただし,一般的には患者が入院期間中に病原微生物との接触により発症した感染症のことを指す。
院内感染はいくつかの種類に分類される。医療感染デバイスによる感染症としては泌尿器科と関連が深いカテーテル関連尿路感染症(catheter-associated urinary tract infection:CAUTI)のほか,血管カテーテル関連血流感染症(catheter-related bloodstream infections:CRBSI),人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)などが代表的である2)。また手技に関する感染症として手術部位感染症(surgical site infection:SSI)が代表的である2)。
特にカテーテル関連尿路感染症は院内感染として重要である。院内感染の約40%が尿路感染症であったとの報告,病院全体の院内感染の63%がカテーテル関連尿路感染症であったとの報告や,泌尿器科病棟の院内感染の74%がカテーテル関連尿路感染症であったとの報告があるほどである3)。
本項では患者への院内感染についてカテーテル関連尿路感染症を中心に解説する。
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