特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅳ 開腹手術
■副甲状腺摘除術(上皮小体摘除術)
061 術後に患者が嗄声を訴える
辻畑 正雄
1
Masao Tsujihata
1
1大阪大学医学部泌尿器科
pp.173-175
発行日 2011年4月5日
Published Date 2011/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102309
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Q 大きな副甲状腺に対し副甲状腺摘除術を施行した症例。術後,患者が嗄声を訴えるようになった。経過観察しているが,いまだに改善しない。
[1]概 説
副甲状腺摘除術後の嗄声は,片側の反回神経損傷による麻痺で起こる。手術合併症としては比較的稀であり,頻度は1%以下と報告されている1)。しかし,副甲状腺摘除術における重要なポイントは,腫瘍の確実な切除と反回神経麻痺を起さないことにあると考える。
反回神経は迷走神経が胸腔内に入ってから出る枝で,右側は鎖骨下動脈を,左側は大動脈弓を下から後ろに回り,両側とも気管枝,食道枝を分枝しながら気管と食道の間を上行する(図1)。神経の走行には左右差があり,右側では気管から離れて走行し,甲状腺下縁では気管右側縁より約3mm外側のところにある。左側では気管食道溝を気管壁に接して走行している。反回神経の同定は,総頸動脈,下甲状腺動脈,気管外側で囲まれた三角の中で行うのが最も確実である(図2)。この三角部を覆う深頸リンパ節被膜を切開し結合織や脂肪を剝離すると,白い光沢のある太さ1~2mmの反回神経を確認できる。
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