書評
「地域医療は再生する 病院総合医の可能性とその教育・研修」―松村理司 編著
邉見 公雄
1
1社団法人 全国自治体病院協議会
pp.72
発行日 2011年1月20日
Published Date 2011/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102192
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「地域医療は再生する」のだろうか? この本のタイトルを見たときに,再生してほしいという当事者としての強い願望と,どんどん悪い方向に流れる現実との狭間で,少しわだかまりのようなものがあった。それを可能にするのは総合医である,というのが著者松村理司氏の持論である。総合医を“間口を広く,かつ深い”領域と述べているが,この本もそれを地でいっている内容である。
かつて小生も,大学病院研究室から片道3時間をかけ毎週水曜日に手術応援に通っていた舞鶴市民病院での氏の総合医としてのご経験,音羽病院での院長としての御苦労がこの本のレベルを高め,広くて深いバイブル的地域医療の解説書に仕上げられている。森鷗外と高木兼寛の論争が専門医と総合医のルーツ的なものというのも目から鱗,大学と市中病院に置き換えるのも可能であろう。スキル・ミックスやメディカル・アシスタントも,米国での経験から説得力がある。50年,半世紀遅れになってしまっても,まだ追いつくチャンスはわずかに残っているとはかない希望も抱かせてくれる優しさもある。
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