書評
「地域医療は再生する 病院総合医の可能性とその教育・研修」―松村理司 編著
岩田 健太郎
1,2
1神戸大学・感染治療学
2神戸大病院感染症内科
pp.1004
発行日 2010年12月20日
Published Date 2010/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102170
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本書の編著者である松村理司先生は一貫して優れた総合医であることをめざし,優れた総合医を育てることに尽力してきた。そして,疲弊の激しい中小病院の勤務医が優れた病院総合医であれば,現在の「医療崩壊」(松村先生的に表現するならば「病院崩壊」)の問題は解決に向かうのではないかと主張している。本書の主旨である。
医療の質という面では病院勤務医はまだまだうまく機能できてはいない。検査過剰,「木を見て森を見ない」と称されるマイクロな医療をぐるぐる回しても,超高齢化社会を迎え,患者の様相が複雑化し,また診療の目的すら明確でなくなる日本の医療に明瞭なヴィジョンを持ち得ないだろう。そのヴィジョンを個々の優れた病院総合医が持てば診療の質は高まり,それがひいては病院という組織の,そして国の医療のあり方の改善につながっていく。松村先生は本書で数々の医療政策に対する提言を行うが,「国がこうすればよいのだ」というトップダウンの,「おかみ丸投げ」ではない。徹底してボトムアップの思想である。そしてそれを具現化しているのが洛和会音羽病院である。
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