特集 ここが聞きたい―泌尿器科処置・手術とトラブル対処法
Ⅱ.泌尿器科手術
B.尿路内視鏡手術
【経尿道的内尿道切開術】
36.尿道狭窄に対して経尿道的内尿道切開術を施行しましたが,術後再発してしまいました。どのように対処すればよいでしょうか。
岡村 菊夫
1
1国立長寿医療センター泌尿器科
pp.120-121
発行日 2007年4月5日
Published Date 2007/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101113
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経尿道的内尿道切開術後の再発に対して,再度切開術を施行するかどうかはよくよく吟味しなければならない。尿道狭窄に対する経尿道的内尿道切開術の成功率はせいぜい60%に過ぎないからである1~3)。最近の論文から,経尿道的内尿道切開術の適応について検討した。
Rourkeら4)は,2cm程度の球部尿道狭窄に対する単回の経尿道的内尿道切開術の成功率は27%(18~49%)と見積もっている(表1)。一方で,観血手術での成功率は96%(93~100%)としており,大きな差があるとしている。振子部・球部尿道の2cm程度の狭窄の観血下切除・縫合はさして難しい手技ではないと考えられるので1),そのような狭窄に対して,内視鏡下切開が初回治療として必ずしも絶対に選択すべき治療法というわけではない。再手術でも同様である。米国の医療状況を鑑みた彼らのcost-benefit analysisによると,2cm程度の球部尿道の狭窄に対しては最初から観血的尿道形成術を行うべきであるが,例えば1cm未満で海綿体線維化が軽度な狭窄など成功率が40%以上あると考えられる症例では,経尿道的内尿道切開術が望ましいとしている。一方,Wrightら5)は,1~2cmの狭窄に対してはまず切開を行い,失敗例に対して尿道形成術を行うのが最もcost effectiveな治療方針であるとしている。本邦と米国では医療環境は大きく異なる。本邦において,これまで医療経済を視野に入れた経尿道的内尿道切開術の有用性が検討されたことはなかった。高齢者が増加し医療の効率化が望まれている現況を考えると,今後,本邦でもこうした検討も進めていかねばならない。
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