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第70回日本泌尿器科学会東部総会は岩手医科大学 藤岡知昭教授を会長として2005年9月28日から9月30日まで岩手県花巻温泉郷にて開催されました。花巻温泉郷は,いわて花巻空港から車で約10分程度と,われわれ飛行機利用者にとっては大変アクセスのよい場所ですが,盛岡駅へもシャトルバスが運行され,参加者への利便が図られておりました。温泉が学会場ということでどのような雰囲気で行われるのか興味津々でしたが,廊下でつながる3つのホテルを会場とし,大会場,いくつかの中会場があり,普段の学会と同じように行われました。ポスター会場はいわゆる「松の間」などの和室が絨毯敷きの会場に様変わりし,各部屋は小さいですが,それぞれのポスターを前に運び,演者はその横でプレゼンし,聴衆は椅子に座り聞くことができるという趣向で,演者と聴衆が十分に討論を行うことができました。一般演題は計317題で,口演108題,ビデオ6題,ポスター203題でありました。ポスターはすべてmoderateでありました。参加者は例年どおり約1,000名とのことですが,大・中会場は収容能力十分で,ゆったりと聞くことができました。
本学会のテーマは「イーハトーブ・オーダーメイド医療」でありました。「イーハトーブ」とは会長の藤岡教授が敬愛される宮沢賢治が提唱した「理想郷」を意味する造語で,理想の医療としてのオーダーメイド医療の確立を目指す藤岡会長の意気込みが感じられました。そのテーマに沿うような特別プログラムとして,東京大学医科学研究所ヒトゲノムセンター 中村祐輔教授による基調講演「オーダーメイド医療実現化に向けての取り組み」,国立がんセンター中央病院 藤元博行先生による「癌外科治療のイーハトーブ・オーダーメイド医療」,東北アジアシンポジウム「ゲノム研究とオーダーメイド医療」,シンポジウム「進行性膀胱癌の治療戦略:個別化治療に向けて」,同じくシンポジウム「限局性前立腺癌の治療戦略:QOLを考慮した治療の個別化」などが企画されました。本テーマに関して総論から各論について,さらにアジアの研究者まで枠を広げ幅広い討論が行われ,藤岡会長が本学会で目指した癌治療戦略の一つとしてのオーダーメイド治療に関する現状と将来性が十分に示されたと思われました。特に中村祐輔教授による基調講演ではオーダーメイド医療の背景から未来像までの全体を大変判りやすく講演していただき勉強になりました。
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