異論・反論 泌尿器科術前・術後管理
2.手術前の剃毛は必要か
齊藤 亮一
1
,
上田 朋宏
1
Ryoichi Saito
1
,
Tomohiro Ueda
1
1公立甲賀病院泌尿器科
pp.284-285
発行日 2005年4月20日
Published Date 2005/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100309
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1 はじめに
外科手術後の手術部位感染(surgical site infection:SSI)は患者・医師双方にとって非常にストレスフルなものである。創感染から開放創となると治療期間が長くなるだけでなく,手術術式・感染部位によっては重症化することもある。さらに多剤耐性菌の出現がこの問題をより複雑にする。SSI予防には術野の消毒,皮膚常在菌量の減少が重要であることはいうまでもない。
歴史的には,100年以上にわたり外科手術前に手術部位とその周囲を剃毛することが習慣づけられてきた。その基本的な理由付けとしては,体毛には細菌が多数付着していて不潔であり,これを除去することで皮膚切開創に細菌が混入する確率を低下させSSIを予防できるというものである。剃刀(カミソリ)による剃毛を徹底し,逆剃りまでしておかないと研修医や病棟看護師を叱り飛ばすという指導医の姿はつい最近まで決して稀ではなかったと思われる。また外科手術前の儀式として看護サイドでも非常に重要視されていたことも確かである。一方で,剃毛には皮膚切開創や術野(特に腹腔内)に体毛が混入して手術操作を妨げることを防止する目的もあったと思われる。しかし実際に剃毛が有用であるかどうかに関しては,長い間,科学的な検証がなされないままであった。
本稿では,術前剃毛が必要なのか不必要なのかevidence basedに答えを明らかにする。
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