異論・反論 泌尿器科術前・術後管理
1.手術前の呼吸機能検査は必要か
武藤 明紀
1
Akinori Muto
1
1山形県立日本海病院泌尿器科
pp.282-283
発行日 2005年4月20日
Published Date 2005/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100308
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1 呼吸機能検査は必要か
呼吸機能検査は,検査自体,被験者の協力を必要とするものであり,小児では検査自体が困難であると考える。基礎疾患や,呼吸状態の既往歴がなく,無症状で元気に生活している小児に対しては,術前における呼吸機能検査は省略できると考える。欧米では医療内容の徹底した合理化をはかっており,特に米国の医療界は「しなくてすむことは一切しない」という診療コンセプトで,元気な小児の術前検査は一切行っていない施設も散見される。アメリカでは政府が管掌する老人医療保険(medicare)や貧困者保険(medicaid)の入院患者に術前検査を行った場合,政府はその支払いには応じないという方針を全米の医療機関に通達しており,民間の健康保険会社もその際には支払いを拒否するようになっている。実際には,術前検査は入院前に,出来高払いのもと外来で全部すませてしまう。入院は手術当日で,手術が終わったら患者を早くベッドから起こして早くに退院してもらう。ドレーンが入っていても,膀胱留置カテーテルが入っていても,その管理は本人,家人に行ってもらう。合理主義アメリカの一面を見る思いがする。
手術は,患者にさまざまなストレスを与え,また麻酔時に使用される薬剤が患者に不利益をもたらすこともあり得る。具体的には,術前に存在する呼吸器疾患が周術期に急性増悪する可能性があるということであり,実際に全身麻酔や手術を契機として,肺線維症が急激に増悪して,呼吸不全を呈し死亡するケースが報告されている1)。肺線維症では肺機能検査や血液ガス検査で異常を示さないことが多く,胸部X線で疾患を疑ったらCT検査による精査が必要である。
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