- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1 HIV/エイズとその流行像の概況
1981年に米国CDCは,カリニ肺炎,カポジ肉腫を特徴とする若年男子の致死性の後天性免疫不全(エイズ)の多発を報告した。症例は指数関数で増加し,1983年3月までに2,000例に達し,95%が男子同性愛者(MSM),静脈薬常用者(IVDU),ハイチ人で,血友病者が1%であった1)。患者が非差別者群で,治療法がない致死性,病因不明の伝染病であったことから,1985年の感染血友病少年の登校拒否など差別問題が多発した。HBV類似の血液由来ウイルスが原因と疑われ,1983年にレトロウイルスのHIVが見出され,1984年に大量培養法ができてHIV抗体検出が可能となり,HIVが病因として確認された。
IVDUでは,1970年代以後多用されたヘロイン静注による注射針の共用,MSMでは出血を伴う肛門性交,血友病者では1960年代の日本のHBV蔓延と同じく,1ロットに1,000人超の米国内外の売血者血液を混合してつくられ,全世界に供給された第8因子が病因であった。1983年,米国で加熱製剤使用が開始(日本では1985年)され,1985年,米国で輸血血液のHIV抗体検査が義務付けられた。直腸は腟と異なり円柱上皮でスワブで擦過すれば実感されるように,外力に弱く,易出血性である。MSMでも特に肛門性交受容者の感染率が高い。米国ではMSMは宗教的に差別されていたが,1970年代のセックス革命以後,サンフランシスコのゲイパレード(日本での第1回は1994年)など大都市では次第に許容された。MSMはパートナーが非固定的で,セックスに金銭が関与せず,パートナー数がマジックジョンソンのように1,000人超など莫大となる傾向がある。
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.