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『臨床皮膚科』54巻9号:681-684頁,2000の野口雅博先生,松尾幸朗先生の原著「褥瘡の臨床的検討」を興味深く拝読いたしました.2,3疑問が生じましたので質問させてください.
褥瘡の色による分類で,「黒色期は黒色の厚い痂皮を付着」と書かれていますが,この厚い痂皮とは壊死組織のことではないでしょうか.この分類を日本で広められている福井基成先生の本1)には,痂皮とは「壊死した皮膚と滲出液が堅く乾燥し,創面を覆ったもの」と確かに書かれています.上野賢一先生の教本2)でも,痂皮とは「漿液・膿汁・壊死塊などの乾固したもの」と書かれています.ところがLeverの教本3)では,crustとは“coagulated tissue fluid and blood plasma intermingled with degenerated inflammatory and epithelial cells”となっています.Ackermanの教本4)でも,crustとは“dried exudate com—posed of serum and cells”であり,“necrotic keratinocytes, parakeratotic cells, fibrin, and bacteria may also be found in crusts”と書かれています.変性した表皮の細胞は含まれても,真皮あるいは皮下組織の壊死は痂皮ではないとわかります.こちらのほうが一般の皮膚科医の認識ではないでしょうか.インターフェロンの局注で,黒色期の褥瘡のようになることがありますが,欧米の論文ではその状態を“cutaneous necrosis”として報告しています.Crustとは呼んでいません.黒色期の褥瘡の黒い部分は皮膚壊死であり,痂皮は付着しているにしても薄いものです.
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