Derm.'99
先住民と侵入者
今門 純久
1
1筑波大学皮膚科
pp.12
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412902845
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世界史にはあまり興味のなかった私も,現代アメリカの歴史が,本国イギリスからの独立と,先住民であるインディアンと侵入者であるヨーロッパからの移民の間の軋轢で始まっていることぐらいは知っている.マサソイトというインディアンの酋長が,最初の清教徒たちに優しく接したがために,最終的にはインディアンは自分たちの土地を乗っ取られてしまうわけだから,やはり,侵入者は追い出してしまうのが良い.
皮膚のバリヤー機能も,“先住民と侵入者”の間の抗争に例えて考えると面白いかもしれない.波打ち際にこしらえた城壁は,さしずめ,皮膚表面を覆う脂質と角層のcornified cell envelopeであろうし,Langerhans細胞は見張り番の兵士であろう.“侵入者”を発見したLangerhans細胞は,急いで兵舎に戻っては,「敵は,こんな格好をしている」と,リンパ球たちを教育する.ここで,“侵入者”のとる行動や特性が,その後の抗争に影響する.貢ぎ物(増殖因子,サイトカイン)やお酒(toxin)を持って,友好的な態度(接着因子)を示すと“侵入者”とは認識されなくなるかもしれないが,変な旗や肩書き,異なった言語(HLAクラスIIや表面マーカー)は,抗争をさらに激化させるであろう.抗争が激化し土地が荒廃して困る時は,国連が大規模な資金・食糧援助(副腎ステロイド)したら停戦が実現するかもしれない.すると,シクロスポリンは,何に例える?
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