研究ノート・1
究極の臨床研究
宮地 良樹
1
1京都大学
pp.13
発行日 1990年1月1日
Published Date 1990/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412900003
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1985年5月,シドニーのオペラハウスで,私は忘れ難い光景に遭遇した.第16回国際リウマチ学会総会で,国際リウマチ学会賞の表彰式が行われ,ライム病を発見したSteereらのグループが,数千の参加者たちから惜しみない拍手を浴びていたのである.受賞の理由として,「ライム病を発見し,その原因を究明し,治療法を確立した」ことが挙げられ,一つのグループが病気の発見から治療まで一貫して研究を完遂したのは「コッホ以来の快挙」として賞讃された.
おそらく,ライム病は以前から地球上に存在し,今までに何人もの臨床医が同じ病気を何気なく診てきたものと思われる.集団発生という疫学的背景があったとしても,臨床医の鋭い洞察力がなければ,ライム病も埋もれてしまっていたかもしれない.さらに大切なことは,同一の研究グループが原因スピロヘータを同定し,したがって有効な治療法にまでたどりついた点である.臨床研究が基礎研究にfeed backされ,再び臨床に還元されたわけである.同様のことは,ATLを発見し,ウイルスを同定したわが国の研究グループにもあてはまるものと思われる.
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