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このコラムを書いている今,私は東北大学皮膚科で勤続16年目を終えようとしている診療副科長である.医師になって26年のうち23年近くは東北大学皮膚科勤務になるが,思い返すと,私を育ててくれたのは,向き合い続けた患者さんたちだったと思う(私は俗に言う「引きの強い医師」と言われている).1年目に病棟で担当した20代前半のメラノーマ患者の癌性腹膜炎を見つけて1人こっそり涙を流した夜,高齢のメラノーマのBSC(best supportive care)患者から「最期は先生に看取ってもらいたい」と言われ,亡くなったときに家族から固い握手を求められた休日,進行した有棘細胞癌で鼠径リンパ節が大腿動脈に癒着しており,病棟当番を終えて午後帰宅した途端に大腿動脈破裂で病院から呼び戻され,血管外科の先生と深夜まで合同手術した土曜日,薬剤性光線過敏症の診断で入院した医師が,週末にどんどん顔の腫脹が進んで食事もできなくなり,「死にたい」と言われて自己判断でステロイドパルス療法を決断した土曜日,壊疽性膿皮症患者が大動脈弁置換術を施行することになり,プレドニゾロンとシクロスポリンでコントロールをつけ,皮膚の試験切開,縫合を行ってpathergyが起こらないことを確認し,周術期の注射薬への置換も全て指示し,休日も連日ICUに往診して問題なく経過した症例,発症直後の中毒性表皮壊死症の症例が金曜日の夜に入院し,土日の病状の進行がステロイドパルス療法で全く抑えられず,ネーベンと一緒に透析室に血漿交換の相談に行った日曜日の午後と,その患者さんが皮膚科病棟での治療で目立った後遺症を残さずに治癒し,無事に出産して,最後の診察のときに頂いた感謝の手紙…
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