Derm.2022
予後の告知
柴山 慶継
1
1福岡大学医学部皮膚科
pp.76
発行日 2022年4月10日
Published Date 2022/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206653
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- 文献概要
私の専門分野は皮膚悪性腫瘍である.悪性黒色腫などの進行癌の患者さんを扱うことが多々あるが,どうしてもsevereな予後告知は避けて通れない.まだ転移のない時期からフォローしある程度年月が経過してからの転移の場合はまだそこまででないが,初診で既に多発転移をきたしている場合の予後の告知は非常に神経を使う.なぜなら患者本人,家族との信頼関係が一切構築されていない状態で,まだ出会って間もない,しかも自分より1回りも2回りも若い医師(私)に突然「過去のデータからみるとかあなたのステージでは余命は数か月です.化学療法の効果がなければ緩和ケアに移行します」などと伝えられても,すぐに受け入れられないし不信感を抱かれることさえもある.それをできるだけ払拭させるには頻回の丁寧なIC(informed consent)しかないがその努力もむなしく,最後,緩和病院に行くまでまたはお亡くなりになるまで信頼関係が構築できず,本人,ご家族が納得されない表情で病院を去るときは何ともいえない虚しさと無力さを感じる.自分にはまだ患者を納得させるための「貫禄」がないからなのかそれともICの「技術的な問題」なのか.
私が悪性腫瘍の治療に関わるようになって14年経つがこのICだけはいまだに慣れない.
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