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文献紹介 マクロファージの上皮細胞様リプログラミングが,マイコバクテリア感染に伴う肉芽腫形成の基盤となり,感染を促進する
藤田 春美
1
1慶應義塾大学
pp.622
発行日 2017年7月1日
Published Date 2017/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205165
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結核は,結核菌Mycobacterium tuberculosisにより引き起こされる伝染性の肉芽腫性疾患である.結核菌に感染したマクロファージは,肉芽腫を形成する過程で未知のメカニズムにより「類上皮細胞」と呼ばれる扁平上皮様の細胞に変化することが知られている.著者らは結核菌と同属の菌Mycobacterium marinumをゼブラフィッシュに感染させて肉芽腫を誘導する実験系を用いて,マクロファージが類上皮細胞に変化する過程を詳細に観察し,本現象の意義を検討した.
著者らは,類上皮細胞が外見的に上皮に似るだけでなく,E-cadherin,plakoglobin,ZO-1など上皮に特徴的な接着蛋白や裏打ち蛋白を発現しており,電子顕微鏡観察でも,上皮特徴的な接着構造である密着結合・接着結合・デスモソームに類似した構造を持つことを確認した.また,類上皮細胞における遺伝子発現を,定常状態の組織マクロファージを比較対象としてRNA-seqで網羅的に解析したところ,上皮特徴的な細胞接着や細胞極性に関わる遺伝子群の発現上昇と,白血球マーカー遺伝子群の発現低下が認められた.これより類上皮細胞は,発現遺伝子レベルで上皮様の細胞へとリプログラミングされていることが示唆された.
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